トランスジェンダーとスポーツ

自民党山谷えり子参院議員(元拉致問題担当相)が、自民党が準備中の「LGBT理解増進法」を検討する党内会議の後、記者団に向かってトランスジェンダー差別発言をしたと報じられている。

 

内容的には数年にわたって繰り返されている「トイレ云々」と「スポーツ」に関する「ヘイトデマ」(と呼んで差し支えなかろう)である。

 

山谷は「アメリカなどで問題になっている」というが、問題に「している」のは主にトランプ前大統領を支持する極右・保守派、宗教右派キリスト教福音派である。

「女性の権利(あるいは安全)」とトランスジェンダー女性の権利が対立するかのようなデマは左派からも散々発信されてきたが、ここにきて家父長制・復古主義ど真ん中で在特会とも交流のある、フェミニズムバッシングの中心にいた山谷えり子が同じロジックでトランス差別を発信したのは象徴的だ。ツイッターで観察しているトランス差別アカウントの多くが山谷に賛同しつつあるようだ(左派と見られる人も含め)。トランス差別を突破口に人権派を切り崩すという極右の狙いは、残念ながらある程度成功していると言わざるを得ない。

 

スポーツは男女を別にして実施されるものが多い。その中でトランスジェンダーはどう扱われてきたか。まず「(希望する)スポーツに参加することは基本的な人権である」ということを踏まえつつ考えておきたい。

 

アメリカで何が起きているかについてはこの記事が詳しい。

front-row.jp

「トランス女子選手が女子競技でメダルを独占した」という(ほぼ)デマについても、この記事のなかで詳しく解説されている。

 

(2022/8/27追記)

最近もこんな事件があったようだ。
トランスを「見つけ出して排除する」という行為は、結局のところ「トランスではない女性の安全も脅かす」のだ。

トランス排除がフェミニズムになるわけがない。

 

 

 

競技スポーツにおいては「公平性」が課題となる。山谷だけでなく、「メダルを取るために」性別を変更して女子スポーツに侵入してくるトランスがいるかのようなデマが流されているが、オリンピック委員会をはじめ様々なスポーツにおいてトランスジェンダー及びDSDsの選手が公平さを損なうことなく参加できるようルールを定めている。

もちろん、そのルールに問題があるなら改善が必要だろう。ただ、その責任を負っているのは試合を監督する競技団体である。たとえばフィギュアスケートの採点が不公平だという指摘を受けて現在のISUジャッジングシステムが確立されたように(なお、細かな基準は毎年のように見直されていることも付け加えておきたい)。

 

 

近代オリンピックが始まった頃、女性はスポーツから除外されてきた。「誰が女性としてスポーツに参加できるのか」をめぐって「性別確認検査」などという人権侵害もあった。

 

西宮市が作っている男女共同参画啓発冊子の2019年版は「女性とスポーツ」と題して、性別確認検査のこと、そしてトランスジェンダーのスポーツ参加にも触れている。

http://www.city.nishinomiya.lg.jp/bunka/danjokyodosankaku/johoshi/danjosasshi.files/sports.pdf

http://www.city.nishinomiya.lg.jp/bunka/danjokyodosankaku/johoshi/danjosasshi.files/sports.pdf

 

(2022/8/27追記)

スポーツとジェンダーについては、北米での研究を踏まえて日本独自の状況や自身の体験を踏まえ、民族・人種・階級とのインターセクショナルな視点から研究している井谷聡子氏の論がとても勉強になるし説得力がある。関心がある方は読んでおくといいと思う。

 

 

 他にも学びになった論文があるので2つ貼っておく。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsss/18/2/18_23/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsss/18/2/18_23/_pdf

 

https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/lgbt_studyreports/2017/2017_part4.pdf

https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/lgbt_studyreports/2017/2017_part4.pdf

 

news.yahoo.co.jp