「トランスジェンダリズムに対する疑問」なるものへの私なりの回答

他の目的でサーチしている時に「トランスジェンダリズムに対する疑問」などという記事を見かけたので私なりに答えておく。あくまで個人的見解

1.なぜ、素人の一般女性がここまで調べて学者に反論しないといけないのか

当方も「素人の一般の人」であって、むしろ学者がきちんとデマに反論しろよ、と思うのだが。いくら「調べて」も差別言説を集めていたら差別的な認識を強化するだけ。

 

2.フェミニスト学者の不在

確かにトランス差別に対して沈黙しているフェミニストは多い。ただ、沈黙=差別容認、というわけではない。トランス差別に加担するほうがフェミニズムとして許されないだろう。
なおフェミニズムが専門でない者を含めれば、千田有紀以外にもトランスフォビア言説を発信している学者は何人もいる。三浦俊彦(東大教授)、中里見博(大阪電通大教授)、森田成也(非常勤講師)など。

 

3.保守右派の不在

山谷えり子が参入してきた。松浦大悟もそうだし、自民党の「性的指向性自認に関する特命委員会」でアドバイザーを務める繁内幸治もトランス差別を展開している。君たちと同じ主張。


4.ジェンダーフリーバックラッシュ時の説明との矛盾

これは日本のフェミニストたち(特に当時中心的であった人たち)が反省しなければいけないところだと思う。そのことは様々な(トランスインクルーシブな)フェミニストが指摘している。バックラッシュに抗する時にジェンダー二元論を強化する論法が使われ、それが批判されないままで来たことの歪みが出ている。


5.「ジェンダー」についての認識の変化

確かに「認識は変化」している。そして「認識の変化についていけない人」もいる。「ついていけない人」が足を引っ張ることで差別的言説を許してしまっている面はある。


6.「女性ジェンダーに割り当てられた公的空間」とは何か

文字通りである。
たとえば男女別になっている公共トイレを利用するのに、いちいち「出生時に割り当てられた法的性別がどちらであるか」を問うことは通常ない。外見などによって(だいたい)この人はこちら、と割り当てられているにすぎない。

あなたが「SEXに基づいている」と思い込んでいる「性別区分」のほとんどは幻想。

 

7.「性自認を理由とした差別」とは何か

これは確かに指しているものが広すぎて曖昧である。「その人のジェンダーアイデンティティを尊重しないこと」と言い換えることもできるが、具体的事例を検討していく必要があるだろう。

なお<性別スペースの問題において「法的性別・身体的性別」と「性自認・性表現」のどちらが優先されるのか>などという問いを投げかけること自体がシスジェンダーの特権性を無視した暴論だと思う。

 

8.法令遵守を求める女性に対する「差別主義者」扱いの正当

まず「法令」が公平平等なのか、という疑問が必要。

そのうえで、前述のとおり、トイレの利用については法的性別による区分はなされていない。風呂についてもそうだが、判断の基準となる「外見」が違うので、トイレとはまた違う運用になるのはやむを得ない。

法令遵守を求める」というところに寄りかかることで差別を正当化することは許されない。

 

9.男女の非対称性

男女の非対称性は確かにある。非常に重要である。

ただ、同時に重要な「シスとトランスの非対称性」から目を背けるならば、「男女の非対称性」をどれほど指摘しても説得力はない。


10.「TERF」という呼称

これはフェミニズム(の言説や論考)を土台にしたトランスフォビアを、伝統的な右派的トランスフォビアと区別するために必要とされた呼称だろう。
両者の混合と合流も進んでおり「TERF」という呼称に拘りはない。まとめて「トランスフォーブ(トランスフォビア)」でよいと思う。


11.「性別男女二元論批判」に対する矛盾

あなたの理解が無茶苦茶です、としか。


12.「性はグラデーション/スペクトラム」との矛盾

<なぜ「多様な性」に対応可能な「法的性別・身体の性別・性自認・性表現を問わない誰でも使用可能な個室スペース」の増設を目指さないのか>と書いてるけど、めっちゃ目指してる。たとえばスウェーデン方式とかね。むしろトランスジェンダーの権利擁護者で反対している人がいたら紹介してほしい。

(ただ現実問題として急に社会インフラを整えるのは合意形成も含めて無理なので、当面は男女別が続くことを前提とした話も必要)


13.TRA学者の姿勢

「TRA」という差別用語の使用をまずやめろ。
あなたの中では「トランスジェンダリズム」と「TRA」は別のようだが、何を指しているのかさっぱりわからん。


14.なぜクィア学会を再開しないのか

知らん。
ただ、同じテーマについて複数の学会で議論されることはあるだろう。
クィア学会が再開されたからといって「女性学会ではトランスジェンダーについて議論しない」ということにはならない。


15.「female」という言葉をなくそうとするのはなぜか

誰が「なくそう」としているのか。藁人形論法。
出生時に割り当てられた性別で生きることであなたが困難を感じていない(その性別からの離脱を望んでいない)のであれば、あなたはシスジェンダーである。


16.性別の自己決定権は「普遍的な人権」なのか

性別に限らず自己決定権は普遍的な人権である。

17.なぜ、女性が獲得した権利(女性専用スペース等)を簡単に手放そうとするのか

女性が獲得したのは「男性と対等に生きられる権利」であって、それは必ずしも男女分離を必須とするものではないはずだ。


18.なぜ、欧米の受け売りばかりで、日本特有の事情について考慮しないのか

なぜ「欧米の受け売りばかり」と思うのか。「日本特有の事情について考慮しない」と思うのか。

こういう言い回しは人権擁護に抵抗する右派によく見られるものではあるのだが、実際には「トランス差別言説も世界中から輸入されている」のだ。特に日本に入ってきているものの多くは英国、米国、韓国に依存している。

 

元記事が「随時更新」とあるので、場合によっては追記するかもしれないし、しないかもしれない。現時点ではここまで。