女性専用車両を使ったトランス差別扇動

産経の(おそらく極右的傾向を持った記者による)女性専用車両に関する記事。後述するように、トランス排除を煽る犬笛の効果がある。そして、社会学者の千田有紀がこれを取り上げて、これも一見「両論併記」に見えるのだが犬笛として働く記事を書いている。

 産経の記事はこちら。

女性専用車、将来は「多目的車」に?

https://archive.is/IftW0

 

千田有紀の記事もリンクしておこう。

「女性専用車」は、まだ必要だ

http://archive.today/Y3wD8

 

産経記事の冒頭を引用する。 

同性愛者など性的少数者(LGBT)への理解増進を図る法案が注目を集める中、鉄道各社が「女性専用車」の扱いに頭を悩ませている。混雑時に女性が安心して利用できるようにと導入された経緯があるが、体と心の性が異なるなど、性自認に悩む人の利用へも目配りが求められるからだ。大手私鉄の社員からは「将来は『多目的車』などに名前を変えないといけないかも」との声も漏れる。

 

「頭を悩ませている」との記述。このフレームアップに基づいて様々な鉄道会社に問い合わせを行い、その結果を並べている記事なのだが、そもそも女性専用車両に対して「LGBTにも配慮しろ」などという要望や需要があるのだろうか?

LGBTのうち、レズビアンおよびバイセクシャルの女性は女性専用車の利用対象であり、ゲイやバイセクシャル男性は利用対象にならない。ヘテロの男女と同じである。トランスジェンダー(ノンバイナリーも含む)を対象とした議論ならそう書くべきだが、そこを「LGBT」と書くことで曖昧にしているのはどういう意図なのだろうか。

では、トランスジェンダーにとって女性専用車はどういう存在か。女性専用車を使えるかどうかは、「自分が女性と見做されるかどうか」がすべてだ。そして、自分がどの性別と見做されるかによって使える施設が制限されるのは女性専用車に限った話ではない。そんなことより目前に転がっている困難がたくさんあるわけで、女性専用車にフレームアップすること自体が「トランスジェンダーを炙り出す」効果を持ったものであると言わざるをえない。多くのトランスにとって「目立つ/注目される」というのは(特に性別の面で)なるべく避けたいことである。

現実を無視して女性専用車とトランスジェンダーの需要に対立があるかのようにフレームアップするのは、社会に存在するトランスジェンダーへの忌避感を煽る効果がある。「犬笛」と言わざるを得ない。

さて、千田の記事のほうはどうだろうか。この産経記事を引用したうえでトランス当事者などのコメントも紹介し、両論併記ながら批判的に書いているようにも見える。ただ、そもそも産経が設定した問題提起に乗る必要はあったのだろうか。記事への反応を見ると、やはりトランスフォーブがフレームに乗っているように見える。犬笛としての効果は(わずかながら)ある、と言わざるを得ない。そして気になるのが、Wi Spaをめぐる騒動(ほぼデマだと考えられている)に関する記事に対し、騒動が事実であるという前提でのオーサーコメントを残していることだ(https://archive.ph/L2r3Z) 。主記事では「冷静な論者」として振る舞う一方コメントでは露骨にトランスフォビアを煽るというのは、一体どういうことなのだろう。